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ボロム&フォス造船所

2002.4
ニッチマーケットを狙う「ボロム&フォス造船所」(ドイツ)


「3大陸8ヵ所の寄港地を巡る一週間の船旅」というダイナミックなクルーズをキャッチコピーに2000年夏、オリンピア・ボイジャーは鮮烈なデビューを果たした。
また2002年にはそれに続き姉妹船エクスプローラーがデビューする予定となっている。この2船の登場でブロム&フォス造船所の名は多くの人々の記録を甦らせることになりそうだ。 
ブロム&フォス造船所は設立されて今年で125年がたつ。現在は種々の船舶の修理をはじめ貨物船、ヨットそして軍関連の船の建造を手がけるドイツを代表する造船所として知られている。
しかしこの造船所の名を耳にしたものにとっては、そこが1930年代に「バテランド」「オイロパ」といったブルーリボンを争うトランス・アトランティックライナー(大西洋横断客船)を次々に排出した造船所としてその名を懐かしく思い起こされる方も多いであろう。
 他の造船所同様、旅客機の登場を境にブロム&フォス造船所も本格的な客船事業から離れ再びその名を客船史上で耳にすることはなかった。BR01.JPG
それから約半世紀が流れ90年に入ると状況も大きく変化した。今再び彼等にクルーズ人気というまたとない追い風が吹き始めたのであった。
「韓国など、廉価で貨物船建造に参入する造船所がマーケットに登場してきたことで、ヨーロッパ諸国の造船所は価格競争を強いられ皆厳しい状況の中にいるところです。
実は我々も貨物船に変わる造船事業を模索し、数年前から積極的に開拓に努めていたのでした。」「そんな矢先でしたロイヤルオリンピック(ROC)社から2船の新造船のオファーが届いたのが。」と船舶、ヨット部門担当マネジャーのウルリッヒ・マルコス氏は彼らが再び客船造船事業に参入するに至る経緯を語ってくれた。
「依頼主でもあるROC社が求めていた客船とは、限られた日数で多くの寄港地を訪れるスピードとまた乗客に快適なクルーズを提供できる客船でした。」と氏。
 さて単純に考えると速さを求めるためにそのパワーに見合うより大型のエンジンを客船に搭載すればすむことであった。
しかし燃費などのことを考慮に入れると採算面の問題に直面する。ブロム&フォス造船にとっては長年海軍船舶建造を通じて培った特殊技術がそれは初めて客船に生かされる時でもあったのだ。
 “ファスト・モノフル”彼らがそう名付けた技術には特許申請がなされすでに数々の船舶に採用されていた。
ファスト・モノフルとは水中に隠れている船底の部分、特に船首部分(バルバスバウを含む)の幅を通常のものよりかなり狭くしたもので、航海時に発生する水の抵抗を大きく減らしエネルギーのロスを軽減しより大きな推進力を発生させるというものであった。BR02.JPG
さらに、その効果を最大限に発揮させるためスクリューを通常のものより巨大なものに変えた。これらアイデアは彼らが今まで手掛けていた潜水艦から生まれたのだという。実際のデーターを測ると同パワーを持つエンジンよりそれはエネルギーロスが約20%抑えられ、クルージングスピードが28ノット(通常20~24ノット)と現存する客船の中でもトップクラスの高速な客船となった。
さらに船内バイブレーションに関しても同様、海軍の船舶建造の経験が生かされることとなる。
「海軍の船というのは敵の潜水艦にその存在を気づかせぬためバイブレーション、ノイズの発生を極力抑えることが強く要求されているのです。」とマルコフ氏。
それは振動呼吸器の装着、BR03.JPGそして配置などを考慮することですべてが解決した。 
「我々の造船所が今後のターゲットとしているのは、大手造船所が扱う大型客船のような今のクルーズブームの中での主流をなすものではありません。
我々の技術を生かせるような業界のニッチマーケット的なものです。」と氏は言う。
いわばROC社のように速さを追求し、明白なコンセプトを持ち、ユニークな寄港地を訪れるような客船造りは彼らにとってまさに腕の振るいがいがあるとでも言ったところか。