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1999.8
世界の客船建造をリードする「フィンカティエリ造船所 」(イタリア)
「フィンカティエリ造船所が現在までに世に送り出した船舶数はざっと7千隻、この10年間我が造船所は世界の客船市場の約4割を占め業界のリーダー的地位にあると自負しております。」と語るのはフィンカティエ造船所広報担当のウンベルト・マルサ氏。
フィンカティエリ造船所は2つの造船所を本社のあるイタリア北部トリエステに、さらにベニス郊外にもうひとつを置き現在海軍用の船舶、マーチャントシップ(貨物/タンカー/フェリーなど)、そして客船の造船を行っている。
特に客船部門に関しては造船全体の6~7割を占めるのだと言う。そしてここ数年のクルーズブームも手伝ってか現在2002~2003年まですでに造船所のすべてが埋まりフル稼働といった状態なのだそうだ。
また彼等はいままで主流となってきた7万トン~8万トンの客船以外にも10万トン級の客船を初めて手掛けた経験も買われ、現在13万トン級の客船に加え、さらに2隻の世界最大級の客船の注文に応じているところだと言う。
最初に簡単ではあるが造船会社が受注から完成に至るまでのプロセスを彼に伺ってみた。 本格的に造船という作業が開始されるまでには何年もの年月が必要とされる。
最初にクライアントと造船所との間で話し合いがなされ、やがて客船像がより明確になされた後契約へと入る。
その後実際に造船所にてスペースや作業する上での問題点などについて細部にわたり検討され、最終的にゴーサインが出るのにさらに2~3年の歳月を要されると言う。
そしてそれらが問題なくクリアした後、いよいよ造船に着手されるのだが最初に行われるのは客船の異なったエリアのための鉄のカッティングで、この作業だけでも少なくとも5~6ヵ月が費やされる。
そしてドライドックにて船の最初のパーツ同士が接着されるのだが通常このとき簡単なセレモニーが行われることになっている。
やがて船のおおかたの組み立てが完了した後、ドライドックには船全体が浮くよういっぱいの水が入れられる。この時点ではまだ船内はキャビン、エンジンなどを除きまだほとんどが空っぽの状態だ。そして最終段階でインテリアと外観に初めて着手され完成へと向かっていく。
だいたい一隻の客船が完全に出来上がるまでには契約から約18~24ヵ月の歳月を必要とされるのだそうだ。
インテリアと外観のデザインはクライアントと彼らに近い顧問技術者によって決定される場合が多い。彼らは乗客の数、寄港地、そしてもし客船がパナマ運河を通過するとしたならば、運河を通行するのに十分な条件を備えているかどうか(特に幅)などを考慮に入れ、それぞれの決定を下していく。とは言ってもアイデアは常にクライアント自身からのものだ。グランド・プリンセスを例に取ると当初クライアントはスカイフォーク・ディスコ(船尾最上階にあるディスコ)の設備を新造船に求めていた。そのため彼等側の建築家は客船のデザインの中にそれを取り入れるようデザインを施していったというように・・・。ちなみにグランド・プリンセスのブリッジなどのようにクライアントのデザインに彼等が手を加えより洗練さを持たせたケースもあると言う。
20年前までの造船というのは水を張ったスペースで鉄や鋼鉄といった材料を直線上に引き、それらを組み合わせ、エンジンから船内施設にいたるまですべて造船所内で組み立てられていた。
しかしここ10年前あたりからそれらは大きく変わった。
客船は現在ドライヤード(完全に陸に上がっている造船所)で組み立てられ、また鋳造された鉄といった資材の使用もごく一部のみとなった。
さらに客船の異なった技術を提供できる業者に依託するようになっていった(それぞれの専門分野による分業化が進む)。
そして最終的に異なった場所で造られたパーツ同士がおもちゃのレゴのように組み合わされ、それにより従来の作業に比べ時間も短縮されるようにもなったと言う。
ところでそんな技術の革新とともに彼等造船所会社の業務内容もいつの間にか大きく変わってきたと言う。それは今までなかったことだが業者の選考や、そしてそれらのまとめ役といったものの比重が置かれるようになってきたのだと言う(まるでコーディネーター的な役割も)。
現在造船所自身が実際造船に係わるのは全行程の70%、残りはそれぞれの専門業者によって賄われるようになってきているのだそうだ。
ちなみにトリエステ本社には約600人からなる優秀なデザイナー、エンジニア、建築家を一同にまとめることができるヨーロッパ最大の開発グループが組織されている。
「今後我々が業界に求められることは公害対策なのです。」例えば客船の燃料はガスタービンからエンジンタービンへと向かっているように、ここ数年海上での自然環境保護が強く叫ばれることと共にそれに応えるため新しい開発がなされるようになった。
また客船を造る上で使用される資材の強度や安全面などにも重点が置かれ新素材の研究が進められている。強度があってそれでいて軽量であること、さらにコストの面など。彼等はジェノアに新素材研究のために200人からなる科学者を擁するリサーチセンターを置いている。特にこの分野は市場で彼等が今後生き残っていくための重要な基盤にもなっているのだと氏は言う。
「客船産業の今後は世界経済に追うところが大きいでしょう。現在アメリカの景気はとても良いのですが、それに対しヨーロッパ経済はそれほど良いというわけではありません。
客船産業は世界経済と共に成長し、今、クライアント(客船会社)はそれら動向を見ながら新しい客船の注文をいたしております。クライアントの中にはアジアのマーケットを見ているところもあります。
またクライアントによっては世界の異なった海域に何隻かの客船を配給することで何らかの感触を得ようとしているところもあるようです。イタリアは何世紀にもわたり海に深く結びつきがあり、過去に多くの有名な航海者を排出するというように高度な文明と華やかな歴史に彩られた国でもあります。
現在なお我々は海の近くに住み、我々の造船所に対する伝統と歴史は今なお生き続けております。我が祖国イタリアには他の国にはない優秀な請負業者がいるということ、そして我が社フィンカティエリが熟練した技術と才能溢れた優秀な社員達に恵まれました。」 彼等造船会社の現在の成功の要因とは常にデザイン、新しいアイデアによってニューシップの建造の手助けをし続けていることだと氏は言う。「約10年前、我々がモダン(現代的)客船のための造船を本格的にスタートした時、我々はイルカの体型を初めて客船に取り入れてみました(リーガルプリンセス)。
そのアイデアは現在ライバル会社も含め、殆どすべての造船会社が取り入れるようになっているのです。」
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