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アトランティック造船所

2001.4.
21世紀の造船会社をリードする「アトランティック造船所」(フランス)


イタリアのフィンカティエ、ドイツのメイヤーズ、フィンランドのクバナ・マサヤードなどと並び、世界ベスト5に挙がるフランスのアトランティック造船所。
現在のクルーズブームの波を受けフル稼働という状況にありながらも熾烈な競争を強いられているのは他社と同様だ。
変化を求められる造船会社の現状を取材した。
 「現在、客船部門・新造船総重量においてはイタリアのフィンカティエ造船所に一位を譲るものの、オーダー数において我がアトランティック造船所はその数14隻と世界のマーケットの実に30~40%を占め、少なくともこの2年世界で最も多くの客船を排出する造船会社であると言えるでしょう。」とスタッフでもあるイアン・モンドッム氏。
アトランティック造船所の前身は、あのフランス皇帝ナポレオンがフランスのリバールーに建造した海軍のための造船所であった。
アトランティック造船所として本格的に設立されたのが1861年。当時は伝統を引き継いで海軍のための造船を中心としていた。
そして彼等が最初に客船造船に着手したのは1964年のことであった。
現在は貨物船、タンカー、客船など幅広く造船を手掛け、現在までに約110隻以上の客船がここで生まれたと言う。
現在造船所に働く従業員の数は約4000人。他に約3000人の請負業者が彼等のまわりで働いている。
 実際客船会社から依頼を受け、客船が完成へと向かうまでのプロセスを簡単に説明して頂いた。
まず客船会社側との交渉が成立すると客船会社側の大まかな設計計画書に沿って最終デザインが決定するまでじっくりと話し合いが行われる。
通常この時点で多くのデザインの修正作業がなされる。それが終了するといよいよ建造が着手される。造船は主に2つの大きなプロセスから成り立つ。
まずひとつ目が船の骨組みを築きブロック(キャビンなど)、配線、エンジン等を組み込み客船としての外観を整えていくこと。そしてふたつ目に船体を装う作業で、主に部品製造業者やサブ・コンストラクターなど(いずれもそれに精通する、家具やインテリア、内装工事などの専門会社)によって細部にいたるまで飾られていく。通常ひとつの船の建造において木材部門、エンジン部門、電気系統部門など、総勢300人の技術者がその回りを囲むように携わる。
そのためすべてのプロジェクト、作業に関わる人々をうまくまとめ上げていくことが造船において最も困難を要することだそうだ。そしてそれが造船所の大きな役割でもあると言う。
「そういう意味では我々の仕事はどこかオーケストラのコンダクターと似ていると言えるでしょう。」と氏。
客船の完成に至るまでに要する期間は客船のサイズ、そしてオーナーが客船に何を求めているかによっても大きく異なると言う。
例えばここ数年大手客船会社はそれにシリーズ化を求める傾向にある。そのような場合、通常シリーズ第1番目の客船の完成は2番目の以降のものに比べ長い時間を要することとなる。
なぜならば第一船は試作を兼ねているため、慎重に綿密な打ち合わせを重ねるなどより時間が費やされるからだ。AT01.jpg
例えば客船ルネッサンス(3万トン)のケースの場合打ち合わせから完成に至るまでに3年半以上を費やし、2船目以降は約20ヶ月の時間で完成したと言う。
アトランティック造船所で造船可能な船数は年間最大6隻。軍艦、フェリー、タンカーなどの生産に加えて5隻の客船を造船していくことが彼等の理想的稼働状態だと氏は言う。 
現在年4隻の客船を造船するというペースで進行し2003年までフル稼働の状態で作業が進められている。 
「アトランティック造船所は大西洋に面する河口の町セイント・ナザイル市に位置し造船業には適した立地条件を持っております。また技術者や研究者、デザイナーなどすべての人間がここで暮らしているのです。」特に客船造船というものは経験によってのみ得ることのできる繊細かつエレガントな手作業を必要とすると言う。
「造船所で働く職人達の多くは、その技術が何世代にわたり受け継がれてきた優秀なスカンジナビア人たちで、そのこともアトランティック造船所が世界のトップレベルの地位を確立することができた理由でしょう。」現在、造船所はフル稼働状態ということもあり、彼らの多くは3交代制という労働体制で週7日勤務しているのだそうだ。
時代の流れは作業を進めていく過程で以前よりも増してコンピューターの必要性を強く感じさせ、また客船会社オーナーからの要望も大きく変化した。
例を挙げればここ数年、客船サイズの大型化や、それに伴い部屋のスペースをより広く設ける要望が目立って増えてきていること、また船内に大型のガラス・ウォール(ガラスの壁)とライト類を多用し、光をふんだんに採り入れ、より開放的で爽快な船旅を提供することを望むようになり始めていると言う。
「現代のテクノロジー(コンピューターのシュミレーションなど)はみごとにそれを可能とし現在のような成功へと導いたのです。」さらに環境に及ばす影響、振動、騒音を減らし、乗客により心地良さをもたらすことができるようディーゼルエンジンからガスタービンエンジンへと移行する客船も増えてきていると言う。
プリンセスクルーズ社からはアラスカの海やそこに生息する鯨など大自然にダメージを与えないように、という要望を受け次の新造船のために新しいエンジンテクノロジーの開発も進めているところだ。「革新的変化とは将来、産業の流れを大きく変えさせる重要な要素でもあるのです。」1997年彼等はより効率的な造船作業を目指し“プロック”(キャビンはひとブロックごとに他の場所で別々に造られている)の建造をするフラットパネル工場に多大な投資をした。
それは昨今の技術的進歩が船をブロック単位で繋ぎ合わせる建造を可能とし今や彼等の仕事にはそのような技術が無視できないものとなってきたからだ。
彼は将来のクルーズ産業を見つめたとき多くのヨーロッパの造船会社は近い将来、アジアの造船所が競争相手として益々力をつけてくるものと考えている。
「三菱重工はプリンセスクルーズから受注を取り付け、この産業に本格的に参入し始めました。また韓国の造船所は政府の補助金によるバックアップを得たことによりビジネスに有利な環境を持ち始めました。」そのことは言い換えれば彼等の基盤を脅かし、競争はより厳しさを増すことを意味するのだと氏は言う。 
「今後とも我々は、描かれている我が社のロゴのイメージそのままに“ダイナミズム”と、そして“ホット”な会社を目指し躍進していきます。
我々は将来においてもベストを尽くしていくつもりです。」 インタビューは2000年3月に行ったものだ。
その後アトランティック造船所にキュナード社が”クイーンメリー2”(15万トン)を発注。クリスタル社が5万トンの新造船を共に一船ずつ発注したことが発表され話題となった。