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RUTTER Technologies 
航海の安全を担うブラックボックス ボヤージデータレコーダー(航行データ記録装置)

2002.10

航空機産業において“ボイスレコーダー(音声記録装置)”は、不慮の事故時の原因究明や将来におけるトラブル回避のための重要な役割を担っている。
その“ボイスレコーダー”がいよいよ本格的に海上を航海する客船にもお目見えすることとなった。
今回は“ボエージデーターレコーダー(VDRー100)"を開発したルター社のディレクター・セールス&マネージャーのイアン・ボウルス氏へのインタビューを通し、システムの概要、そのあり方を検証してみたい。 

国際海上協会(IMO)が定めた海上人命条約(Solas International Regulation)に基づきすべてのパッセンジャーシップは2004年までに“ボヤージデータレコーダー”を搭載することが義務付けられた。
“ボヤージデータレコーダー”とは、その名が示すように「航海上の情報を記録する機器」を意味し航空機のボイスレコーダー同様、(救命)が最大の目的となっている。
現在数社がその分野での開発に乗り出しており、このカナダに本社を置くルター社もその内の一社である。彼等が開発した“VDR-100”はすでにミレニアム、カーニバルプライド、カーニバルスピリット、コスタアトランティカなどに取り付けられている。VDRとはボヤージデータレコーダーの頭文字をとったもので、それに続く数字がその製品番号を表している。各メーカーが開発したシステムの働きは、基本的にはほぼ同様なのでVDR-100(以下略してVDR)を例にその働きをみてみることにしよう。VDRは大きく分けて2つのユニットから構成されている。
そのひとつが、「データマネージメントユニット(別名をホワイトボックス)。」そしてもう一方が「ハードンドストレージユニット(オレンジボッックス)」である。ホワイトボックスが航海上のあらゆるデータを受け持つ集積機器なのに対し、後者のオレンジボックスはVDRにおけるまさに生命線ともいえる非常に重要な部分となっている。と言うのはオレンジボックスはホワイトボックスから送られてきた航海上のデータを随時保存し、深さ6000メートルの水圧に、また氷点下260度の厳寒下に10時間、また1100度の高熱にも約1時間耐えられる驚異的な耐久力を持ち、あらゆる状況に置かれてもそれらデータを確実に守る能力を備えているからだ。
通常オレンジボックスの設置場所は、ダイバーやリモートオペレートビークル(遠隔装置搭載の小型潜水艦のようなもの)が後に回収しやすい場所、主に業界用語で言うところの”モンキーアイランド”(ちょうど船舶で最も高い場所。
例えばブリッジ上のパッセンジャーオブザベーションデッキエリアなど)に置かれることが多いのだそうだ。ちなみに記録されるデーターは約12時間(時にはそれより長い場合も)、事故の12時間前の情報がボックス内に自動的に送り込まれることになっている。またオレンジボックスは、災害時の原因究明のキーともなる重大な役割を担っていることから、業界用語で“フェイナルレコーディングメディウム”とも呼ばれている。
さて、実際オレンジボックス内に貯蔵されるデータ(IMOが条例の中で定めたもの)というのは、具体的にはそのとき航行した進路図や表示されていたレーダー状況などすべての“ナビゲーションデータ”である。さらに外部とのコミュニケーション、選択された速度、またその速度の切り替えにおけるエンジンの反応までもがそのままデータとして記録され、システムを再生すればまさにブリッジ内で起こったほぼすべての状況を再現することが可能となる。通常ホワイトボックスの方は、ブリッジ内の機器と接続されているためブリッジ内もしくはお隣のエレクトロニックスルーム、またはそれに近いところに設置されているのだそうだ。
さてIMOによって義務化された船舶への搭載は、その船舶の種類(車両や乗客を乗せる一般的なフェリー、トラック、コンテナを積載したもの、そしてクルーズ船)、または製造された年月日によって異なる。例えば客船の場合、2002年7月以降建造されたものは、すべて搭載せねばならないし、またそれ以前の建造のものならば、2004年の1月1日までに搭載を済ませておかなければならない。もちろんそれは日本の客船も同様だ。 
ところでVDRのホワイトボックスが、高精度な“データレコーダー”として、または他の機器との拡張性があることから、その能力を利用すればそれがクルーズ産業のさらなる一助ともなる
。その一例として、氏は出航時の客船が港を離れるときのコントロールの難しさをあげた。
彼らのオリジナルソフトを使ったデータ解析によって、それをパラメーター表示させることでコントロール時の計器の反応を敏感に読みとらせ、例えば外部からの影響(突風や潮流)を予想するなど、“VDR-100”の能力を最大限活用すればあらゆる条件下での不測の事態を回避することも可能なのだと言う。
背が高く細長い客船、流線型のポッチャリしたものなど、昨今のクルーズ船のデザインは多様だ。その形状によってもコントロールに大きく違いが現れるのだそうだ。
このように“ボヤージデータレコーダー”は、本来の役割とは別にプラスアルファ的一面も備えている。私たちに安全で快適な船旅を提供してくれる“クルーズ”はそんな彼らによって支えられていることは確かなようだ。


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