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「ガスタービン」  ロールスロイス社

2003. 4

ロールスロイス(R・R)社と聞いて誰もが思い浮かべるのがイギリスの名車、あの世界最高級の車を排出する自動車会社のことであろう。しかし、(R・R)は車両部門の他、航空機や船舶の機器部門を持ち多方面にわたる業界に信頼を築き上げてきた会社としても知られている。そのR・R社が現在進めているのが旅客機ボーイング777に搭載されているガスタービンエンジンを船舶用に転用するプロジェクトだ。開発中の“マリン・トレント30"についてR・R社コマーシャル・マリンガスタービン・ビジネスマネージャーのジェレイン・ロイド氏に話を伺った。

R・R社におけるガスタービンマーケットの歴史は古く、航空機や船舶へと供給された製品は数多い。特に彼等は海軍の船舶などにおいては40年以上の実績を持っているとロイド氏は言う。そのR・R社(船舶部門)が今大いに期待をかけているのが、新型ガスタービンエンジンによるコマーシャルマリン(商業用船舶)マーケットの拡大だ。「R・R社はライバル社がこの特殊な分野で非常な成功を収めていることに気づき、そしてそのことが我々を新エンジン開発に駆り立てたのです。」彼が言うのはゼネラルエレクトリック社(GE社)が開発した新型ガスタービンエンジンLM2500のことである。GE社はどこよりも早く初めて旅客機のエンジンを船舶用に改良し、客船業界に旋風を巻き起こした会社である。彼らの製品は瞬く間に市場に広まり、今やこの部門では独壇場となろうとしていた。ガスタービンエンジンの最大の魅力は、現在主流のディーゼルエンジンと比べ、限られたスペースで大出力を発生させることができるということである。R・R社とGE社といえば、どちらも世界の航空機エンジン市場を二分するほどの大企業いわばライバル同士である。そんな訳でR・R社のこのマーケット参入はごく自然なことであると言えよう。面白いことにR・R 社の新型ガスタービンエンジン“マリン・トテント30 (MT30)”は、GE社同様彼らの既存の航空機用エンジンから選ばられており“エアロ・トレント800”という現在ボーイング777に搭載されているものであった。しかしGE社を追従する形でスタートしたプロジェクトであったため、船舶用に改良を施し実際に製品が市場に登場するのは2004年初旬とまだ先のことだ。「マーケットは今後も大きく成長を続けていくものと予想しているので、我々は楽観視しています。」と氏。「また我々がそのマーケットとする船舶は客船だけではなく、ガス輸送船、高速運搬船といった主に時間に制約を持つ大型船舶なのですが、その潜在能力はまだ未知数でもあるのです」と氏は他の船舶への可能性も示唆した。さらにMT30は36メガワットのパワーを出すことが可能で現在市場で使用されているもの(LM2500)より約30%パワフルなのだとロイド氏は言う。 さて船舶の推進システムとしてガスタービンエンジン導入を考えた時、船舶のオーナーは2つの選択を迫られることになる。そのひとつは従来のようなギアーボックス、ドライブシャフトを連結し機械的にスクリューを稼働させ船舶を動かす“メカニカル・ドライブシステム”。そしてもう一方がジェネレーター(発電機)をセットし、エンジンパワーを電気エネルギーに変換、モーターでもあるポッド(例えばアジポッド)を稼働させ船舶を動かす“エレクトリカル・ドライブシステム”である。特に“エレクトリカル・ドライブシステム”を搭載した場合、客船が得られるメリットは絶大だ。例えば先に紹介した「パワー」、「スペース」についてみると、ガスタービンエンジン“MT30”1基から得られるパワーは36メガワット、ユニット全体の重量は26トン。しかし同様のパワーを持ったディーゼルエンジンを搭載した場合、なんと4~500トンともいわれる重量にもなるのだそうだ。またスペースにおいてもMT30はそれ自身がコンパクトであることに加え、ギアーボックス、ドライブシャフトなどなくなるため船舶オーナーはその空いたスペースに、客室などさらなる公室や設備を追加することも可能になる。また乗客側からのメリットとしては、ディーゼルエンジンが構造的にピストンによる上下運度なのに対し、ガスタービンは回転による運動であるため、今までのような不快な振動やノイズが大幅に軽減させるのだそうだ。さらにメンテナンス面において氏は次のように指摘した。「ある客船が6基のディーゼルエンジンを搭載していると仮定しましょう。それが18シリンダーエンジンであれば、メカニック達はつねにそれらの100以上のピストンが順調に上下運動を繰り返しているかに気を配らなければなりません。それに対しガスタービンの方はシンプルな構造なので、メンテナンスも非常に楽なのです。」「ボーイング777には2基のエンジンしか搭載されていません。それでも長距離運行には申し分ないのです。いずれは6基ものエンジンを搭載した船舶は姿を消すでしょう」と氏。 ところでガスタービンで使用されるマリン燃料だが、アラスカ、カリブ海など現在環境問題が叫ばれている中、ディーゼルで使用される重油に比べ有害な酸化物の排出が少ないといったメリットもある。「ヨーロッパやアジア海域も近いうちに同様な問題が持ち上がってくることでしょう。今誰もが清潔な推進システムの必要性を真剣に考えるようになってきております。向こう5年以内に業界はガスタービンのさらなる必要性を感じるはずです。」R・R社(船舶部門)は、今後ガスタービンを船舶部門の主軸とし船舶用機器の開発、供給をしていくと言う。


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