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WARTSILA
2002.2
客船を進化させるテクノロジー群 環境保護の未来を支えるスモークレス・エンジン
80年代客船推進動力の主流を占めていたのはディーゼルエンジンシステムであった。
当時各社市場の成長に伴い巨大なパワーを持ち燃費効率の良いシステム開発に熱中するのであるが、こと環境面においては、ややおざなり傾向にあった。
90年代に入るとクルーズ産業はさらに広域に渡り拡大を続け、市場には環境保護を唱える動きが徐々に高まりを見せ始めてきた。
フィンランドに本社を置くバルシラ社は、ディーゼルエンジンを扱う会社にあっていち早く環境に即したシステム開発を進めてきた会社である。
そして、“ザ・エンバイオ・エンジン”(環境エンジン)をコンセプトに彼らのテクノロジーが結集されたシステムは、今年夏、客船カーニバルスピリットで“スモークレス・エンジン”(煙を無排出)として世に送り出されることになった。
パルシラ社が従来の性能を維持し、なおかつ有害な排気を抑えることを可能としたのは、「コモンレール」「ダイレクト・ウォーターインジェクション」「コンパクトSCR」と呼ばれる独自に開発した3つのテクノロジーに負うところが大きい。
それらの概要を紹介しよう。 1. 「コモンレール」・・・・・エンジンのメカニズムとは圧力が加えられたシリンダー内に送り込まれた燃料が発火によって爆発エネルギーを生じ、それが機械的作用によって動力エネルギーへと変換される。
コモンレールの場合、シリンダーでの発火タイミングを通常の機械的に起こさせるものから、電気的にコントロールさせるものへと変え、それにより不完全燃焼状態を回避。結果発生させる窒素酸化物を今まで以上に削減するのに加え、常に安定したエネルギー供給を可能とさせた。 2. 「ダイレクト・ウォーターインジェクション」・・・・理論上エンジン内のシリンダー爆発時による発熱を瞬時に抑えることは、窒素酸化物削減に大きな効果がある。
そこで燃焼噴射バルブの隣に水を発する噴射バルブを設け、圧縮されたシリンダー内に燃料と水を同時に送り込むというもの。 3. 「コンパクトSCR」・・・・わかりやすく言えば車の触媒装置のようなもの。
例えば、酵素のように自身は化学変化せず添付された物質のみを変化させるという特性を生かし、それ自体がある種フィルターのような役割を果たしている
。触媒装置としてのSCRは、それによって有害な窒素酸化物を大きく減らす働きがある。
今まで推進システムはエンジン、ギヤー、プロペラ(スクリュー)とコントロールシステムをひとつの組み合わせとして考えられてきた。
しかし市場にポッド(アジポットなど)といったスクリューを備えたモーターが登場して以降、現在の客船オーナーたちはポッドを積極的に導入することで、エンジンをジュネレーター(発電機)に動力を供給するメインシステムとして考えるようになってきた。
なぜならば、そうすることでより多くのスペースが船内に確保でき、また乗客達を今まで解消できなかった不快なバイブレーションなどから解放させられるからだ。
さて新システムの登場を受けカーニバル社は“スモークレス・エンジン”を、これからデビューが予定される傘下のコスタ、そしてホーランドアメリカの新造船も含め搭載することを検討中である。
また、すでに現存する客船の一部への転換計画も進められている。
さらに2003年デビュー予定のクイーンメリー2世(QM2)に、システムが4基搭載されることも発表された。
ところで昨年市場の動向にいち早く反応しバルシラ社より一足先に“エコ・エンジン”(環境に優しいエンジン、ミレニアムに搭載)を登場させ、一躍注目を得ているのが、客船事業に新規参入したゼネラル・エレクトロニック(GE)社である。
GEは航空エンジンに使用する“ガスタービンエンジン”を客船用に改良を加え、従来の客船の主流燃料でもある重油の代わりに“クリーンエネルギー”(マリン燃料)の使用を可能とすることでこれからの推進動力の流れを大きく変えようとしている。
いわばバルシラ社にとっても最大のライバル会社である。
それについてバルシラ社は「我々の“スモークレス・エンジン”は、依然GEの“ガスタービン・エンジン”以上に有害な一酸化炭素や二酸化炭素の削減において優れております。
また国際海上協会(インターナショナル・マリタイム・オーガニゼーション、通称IMO)とは、長年にわたり排気というテーマについて検討を続け、IMOが設けた昨年の基準ラインを我々はすでに 5年前にクリアしているのです。」と明言。
さらに「アメリカの“環境保護エージェント”(エンバイラメント・プロテクション・エージェンシー、通称EPA)と共に働く中で、我々は今日のみでなく将来においていの基準の変化に対応できるよう、今なお問題解決に努力を重ねているのです。」と語ってくれた。
バルシラ社としては、今、客船オーナーたちの多くは“クリーンエネルギー燃料”(ガスタービン・エンジンで使用されている燃料)に着目しているようだが、果たして長期的に見るならばとの思いもあるようだ。
バルシラ社は(スモークレス・エンジン)開発までの過程で、前述したシステムも含めいくつもの特許を保持しており、この分野における実績の長さそして今後の可能性については確固たる自身を持っている。
「現状ではIMOの基準に我々が従っているというより、我々が彼等を牽引していると言った方が近いのでは・・・。」とバルシラ社のスタッフフレッド・ダンスカ氏。
いずれにせよ今後の展開がそれぞれの将来を決定付けることであろうことは確かなようだ。
現在においては幾つかの客船が両者のシステムを共に新造船に導入し“複合的なエンジンシステム”として状況に応じて使い分けているようだ。
推進動力における競争は新たなる局面を迎え各社、まさに今スタートラインに並んだといったところであろうか。
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